イーグル野鳥日記

２０２３年９月２４日（日）　　　49,888

今日のブログは長崎県五島列島「福江島」大瀬山頂上展望台より。

早朝３：４５起床。朝食後４：３０に出発。宿をとった福江市内から観察ポイントまでは、車で軽く１時間かかります。５：４０現地駐車場に到着。もう既に２０台の車が来ていました。

急な階段を１００mほど階段を登ると、もうそこは頂上展望台。３６０℃のパノラマが広がります。眼下の海の青さと緑の山々、そして純白の大瀬崎灯台。朝焼けの大空とのコントラストが本当に素晴らしい。

天気も上々。今日は１日中、展望台周辺で過ごしました。

６：１５に太陽が出てきました。６:３２。昨日、福江島に到着し、塒を取っていたハチクマが一斉に舞い上がり始めました。その数は数１００羽。眼下の山々や海の方から、夜明け直後の上昇気流をとらえたハチクマが次々と空高く舞い上がります。至る所で、大きなタカ柱が出来ます。その雄大な光景には息をのみます。

「壮観！」「勇壮！」と言う言葉がぴったりです。

暫く舞ったあと、タカたちは一気に海の方へ流れてゆきます。「流れる！」。タカたちが上昇気流に乗って十分な高度を稼いだ後に、一斉に目的の方向に飛び始める瞬間。「流れる！」。この言葉がタカたちの勇壮な渡りの幕開けを表現する最高の言葉だと実感する瞬間です。背筋がゾクゾクし、鳥肌が立つような感動を覚えました。

しばらくすると何割かのハチクマが海の方から戻ってきました。ここ大瀬崎から海を越えた中国大陸の上海近郊までは直線距離で６００km以上あります。

その間、ハチクマたちが着陸して休む場所は皆無。東シナ海を一気に横切るわけですね。

ハチクマたちの飛行速度を考えると、対岸にたどり着くまでに、早い個体で「１日半」。遅い個体は「３日」も、飲まず食わず、睡眠もとらずに飛び続けなければなりません。

天候の悪化もあります。発信器をつけてのハチクマの渡り調査から明らかになった渡りの生態ですが、ある個体は、対岸まであと１００ｋｍの所で、何を思ったか引き返し、大瀬崎に戻り、更にそのまま長崎市の方まで飛んで行ったそうです。その飛行距離は１４００ｋｍ。軽く５日間は空中に居たそうです。我々人間の感覚ではとても理解できない渡り鳥のすごさですね。

この日も、海に飛び出したハチクマの約５０％がこちらにもどって来ました。

渡りの過酷さ。強い遺伝子を将来に残すための本能的な行動とはいえ、ふるいにかけられる個体の運命に思いを致すと、つくづく、自分は人間に生まれついて幸せだなと、ほっとしたような気分になります。

勇壮で悲壮感あふれるタカたちの渡り観察。

すべてのタカたちの無事を祈らざるを得ないような気持になります。ここに来ている人々は、みんな心の中で「頑張れー！」と叫んでいます。

美しい海と山。ハチクマたちと同じルートをたどったと言われる「遣唐使船」の様に、大海原を渡り行くハチクマの勇姿。そして、見送る人間の感動と祈り。

これが、このような地の果てまで、こんなに多くのバードウォッチャーが引き付けられる最大の理由だなと思いました。

夜明け直後

ハチクマが上昇を開始！

光が足りない！

人々の様子はこんな感じです。

山肌に出来る上昇気流を

必死でつかまえようとしています。