2023年11月9日木曜日

 2023年11月11日(土曜日)    56,602
今日は貴重な写真を公開させていただきます。
4名の撮影者の方々にご協力とご承認を頂きました。ありがとうございました!
多摩川を上流から下流へ向けて「渡っている」と思われる「オオミズナギドリ」の様子です。
第1例:2022年10月30日 12:37 日野用水堤付近  K井氏撮影
第2例:2022年10月30日 14:00   多摩水道橋付近  Y田氏撮影  
第3例:2022年11月9日  09:44   宿河原堰下流付近 K西氏撮影
第4例:2023年11月4日  13:36   是政大橋付近   S藤氏撮影
いずれも1羽で飛翔。旋回した後、下流へ飛び去っています。
いずれの日も天候は晴れ。その時期に台風や低気圧はなく、強風も吹いていませんでした。
第1例と第2例は場所・時間の関係から、同一個体の可能性も高いと思われます。

           【第1例:K井氏撮影】



             【第2例:Y田氏撮影】





【第3例:K西氏撮影】



【第4例:S藤氏撮影】




オオミズナギドリ(Streaked Shearwater)」は、周年日本近海で見られ、個体数も多いお馴染みの海鳥です。全国の島しょ部で繁殖しています。私の出身地である京都府の「府の鳥」でもあります。ミズナギドリとは「水をなぐ鳥」の意味で、関東では太平洋にいます。風の強い日が大好きで、盛んに超低空飛行を繰り返し、翼を左右に振りながら、交互に片側の翼で波を「薙ぐ」様に飛びます。その姿が格好良くてこたえられない。

オオミズナギドリのヒナが、移動するのに十分に大きくなるのが11月。
親鳥は子育てが終了するとフィリピンやインドネシア、オーストラリア北部へ渡ります。 また、雛も巣立ち後、親とは別行動をとって同地域へ向かうと言われています。


当初、相模湾に沢山いるオオミズナギドリが、台風や強風など何らかの理由で多摩川まで流されてきたのだろうと推測していました。しかし、4例ともに、天候が比較的長い間安定している時期の出現でしたので、「不可解」という思いが正直なところでした。一体、なぜ、10月下旬~11月初旬に、多摩川にオオミズナギドリが現れるのでしょうか?
2年間にわたり、同じ時期に4例も「多摩川南下」が確認できています。
悪天候でもない時に、3~4回も相模湾から流されてきたとは考えにくい。

【考察】
日本海の島しょ部で繁殖を終えたオオミズナギドリが熱帯海域に渡って行く際、
成鳥は、過去の渡りの経験からリスク(オオミズナギドリは陸に降りると飛び上がれなくなる!)の大きい陸上移動を避け、津軽海峡や対馬海峡を通って熱帯海域に向かうと考えられています。
これに対して、幼鳥は初めて渡りをするわけで、渡りルートについて経験がありません。そのため、「南へ向かえ!」という本能だけに従い、近道の「日本列島横断ルート」をたどるのではないかと考えられます。
幼鳥が山を越え、谷を越え、関東平野に入ると、より安全な多摩川などの大きな川の上を飛んで、南へ渡って行くのではないでしょうか?

毎年、この時期には多摩川上空をオオミズナギドリ(幼鳥)が通過していると考えられます。相模川や酒匂川などや上信越・関東・東海地方の大きな川の上空でも同じことが起こっているのではないでしょうか。
(注)東京湾浦安沖や東京港野鳥公園などでもオオミズナギドリの目撃談は耳に致します。こちらは東京湾のすぐ外や相模湾に沢山いるオオミズナギドリが東京湾内に入って来たものと考えられます。

【参考情報】
読売新聞2018年2月9日付に、新潟県粟島で繁殖したオオミズナギドリの幼鳥が「危険な内陸飛行」を行い日本列島を横断するという名古屋大学の研究を紹介する記事が出ていました。
以下は記事の抜粋です。
新潟県の離島・粟島(あわしま)で生まれた海鳥オオミズナギドリの幼鳥は、南の越冬地に渡るのに、危険の多い内陸部の上空を飛んでいくことが名古屋大の調査でわかった。成鳥は通常、内陸部を避け、本州を迂回うかいして安全な海上を飛んで渡っていく。幼鳥は経験が浅いため、まっすぐ南を目指すとみられる。
 海鳥が日本列島を通過することが確認されたのは初めてという。
 粟島は国内有数のオオミズナギドリの繁殖地。国の天然記念物にも指定されている。同大学の依田憲教授(生物学)らは2016年、粟島で幼鳥30羽の背に全地球測位システム(GPS)の装置を付け、飛行ルートを調べた。
 その結果、いずれの幼鳥も4、5時間かけて本州を越え、愛知県の濃尾平野や静岡県の伊豆半島、宮城県付近に至り、そこから太平洋に飛び立っていた。17年も調査したが、結果は同じだった。
 海上は餌が豊富で、風にのれば遠くまで滑空でき体力をあまり消耗しない。一方、内陸部はカラスなどの天敵が多い上、木々が邪魔になり、いったん降りてしまうと再び飛び立つのが難しい。実際、幼鳥は巣立ってから1か月以内に6割が命を落とすという。

 依田教授らの過去の調査では、成鳥が粟島から南へ向かう時は、津軽海峡や対馬海峡を経由して太平洋に出ていることがわかっていた。幼鳥たちは親が旅だった後に、自分たちだけで渡っていくため、飛行ルートは知られていなかった。国内の他の繁殖地で生まれた幼鳥の飛行ルートまではわからないが、依田教授は「経験豊富な成鳥は安全なルートを選ぶが、幼鳥は体に備わった何らかのコンパスだけに頼って、単純に南下するのだろう」と推測している。
 研究成果は昨年11月の米科学誌「カレント・バイオロジー」に掲載された。」

【お願い】
まだまだ、観察実績が足りません。
もし、多摩川上空をオオミズナギドリが飛んでゆく姿を観察・撮影した方がございましたら、ぜひとも情報提供をお願いいたします。
連絡先】
メールアドレス:kniiya@y8.dion.ne.jp
電話: 080-3173-7175
宛名:イーグル218

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