2022年9月24日土曜日

 2022年9月24日(土曜日)   10504
今日も終日の雨。天候には勝てません。家から1歩も出ない、誠にレアーな1日でした。
という事で、今日の書き込みは野鳥ではなく、野鳥を見るために外国では当たり前の施設=ハイド(野鳥観察小屋)についてご紹介させていただきます。

英語の辞書でhideを引いてみて下さい。動詞の項は「隠れる」ですが、名詞の項には「野鳥を観察するための隠れ場所、観察小屋」と出てきます。野鳥観察のための小屋をhide(ハイド)と呼ぶ習慣は欧米ではかなり一般的で、hideはみんながよく知っている普通名詞なのです。そのくらい、誰もが知っていて当たり前の施設なのに、日本にはhideが少なすぎると常々感じています。もちろん、板をはっただけのブラインドや簡易タイプのhideは、日本でも少数見かけますね。でも、欧米のハイドを経験すると、便利さ、快適さ、効果、利用哲学に大きな開きがあり、hideに対する考え方が、日本内外で根本的に違う様に感じます。

具体的には、窓やテーブル・イスの配置が全然違います。日本はなぜか横に全面的にスリットを入れずに、スリット(見るための隙間)を段違いにしたり、途中で区切ったりしているのが多い。窓の高さも合っていない。外国のハイドでは横一線に長い窓が開いています。窓は上下に幅があり大きいので、子供さんでも巨人でも大丈夫。椅子の方も窓に合わせて、長い椅子が一般的。図鑑や小物を置ける長いテーブルも必ずついています。肘をついて双眼鏡やカメラを支えられるのがうれしい。雲台つきテーブルの場合もあります。
窓・イス・テーブルがすべてフリースペースなので、利用者同士でその時の人数に応じて、スペースを調整しやすいメリットもあります。

また、窓も大きく視界が広い。野鳥は「人間の全身、特に下半身」が見えることを嫌います。上半身だけではほとんど気にしません。欧米でハイドに入っていると、こちらがおしゃべりしていても、シギチ鳥や小鳥が2~3mまで近づいて来てくれるという体験をよくします。もちろん、窓にはガラスなどハマっていません。曇るだけだから。窓ガラスなどなくても、野鳥は気にしていません。下半身さえ見えなければ大丈夫なのです。我々はこれを「ハイド効果」と呼んでいます。
車で観察なさる方は、これ、よくわかりますよね。ちなみに、海上でも、縁のある通常船なら「ハイド効果」があります。人間の全身が見えてしまう「いかだ」では海鳥には近づけません。車や漁船・フェリーには「ハイド効果」があるわけですね。

ハイドがあれば、風雨や雪を気にせず観察できますし、お弁当だってたべられます。みんなで情報交換もできます。もちろん、お決まりの自慢話も! バリアフリー構造が一般的で、車いすの方にもやさしい。バードウォッチング人口の拡大にも一役買っていますね。

費用もピンキリですが、私が英国に駐在していたころは、標準的なモデルでは50~80万円で販売されていました。日本の場合、建設現場のコンテナハウスを改造してハイドを普及させてゆく手もありますね。ハウスに車輪をつければ、季節による移動も可能です。

私の密かな夢は、マイフィールドの多摩川やその周辺の公園にハイドをたくさん作る事です。以前住んでいて野鳥ガイドをやっていた北海道根室市には、5~6か所のハイドがあります。時間はかかりましたが,根室市長や漁協の組合長、海上保安庁などに粘り強く働きかけ、説得し、協力を取り付けてきた成果です。多摩川のような大都会は大変かもしれませんが、ハイドがあるだけで、野鳥観察の快適さが格段に上がる事だけは間違いありません。
一般の方々の野鳥への関心向上にもつながると確信いたします。
機会がありましたら、クラウドファンディングなどもやりたいのですが、その前に、乗り越えなければならないハードルが山の様にあります。

今は、地道な観察の積み重ね、仲間づくり、そしてブログを通じた情報発信で手いっぱいの毎日ですが、この夢は大切に温め、いつの日にか、少しでも実現できればいいなと考えております。
本ブログをご愛顧いただいている皆様におかれましたも、是非とも、このハイドというものにご興味をお持ちいただければありがたいと思います。


台北の野鳥観察公園にあるハイド


車いすOKのバリアフリー構造です。


フィールドスコープやカメラを取り付けられます。便利!


イギリスの世界バードフェアに参加したときに見かけたハイド。
約80万円で販売中でした。


販売中のハイドの内部。窓は上に開いて、留め金に留める構造。
帰る時には窓を下ろして、窓にふたをして帰るのが礼儀です。


長椅子も可動式なので、自由に使えます。


実際の英国イングランドにあるハイド。
ハイドの両側も塀で囲っています。ハイドから出たら人間が見えるのでは、片手落ちです。英国人は徹底的にやってますね。本当に素晴らしい効果を発揮していました。
ココは大きな湖で、ミサゴの繁殖風景が自由に間近で観察できます。


ハイドの内部。後ろの席は順番待ちの人々。
文句も言わずに愚痴もこぼさずにじっと待ち続けています。イギリスらしい。
ココは有名ポイントなので、人が多い。
英国のBW人口は、熱心な方だけで300万人以上です。
ちなみにイギリスの人口って日本の半分です。
日本野鳥の会の会員数は??? 忘れました!


周囲の景観に溶け込むように工夫がなされています。


こちらはスコットランドのハイド。ここも人気探鳥地です。
ちなみに、英国のバードウォッチャーの内カメラマンは、今でも3人に一人くらいです。
イギリスでは「見る文化」なのです。


英国イングランドの新型ハイド。ここは窓ガラスがある。曇るので煩わしかった。


窓の開閉ハンドル。無駄?


内部はすっきりしていて、実に快適。
この人も筋金入りのバーダーです。
外国には生涯で数千種類の野鳥を観察している方がざらにいます。
私も8,500種以上見ているおじいちゃんをガイドさせていただいたことがあります。
こちらが教えていただくことばかりでした。
初めて日本に来ても幼鳥まで見分けておられました。
世界にはすごいバーダーがきら星。


ハイドには必ず野鳥情報掲示板があります。楽しい!


こちらは北海道根室市に我々が作ったハイド。
市民の森という日本の森林公園のようなところに作りました。
粘り強く根室市に働きかけをしました。
内部の飾りつけは自分の写真を使用したりして経費節約に努めています。



根室市の市民の森ハイド。
森に来る小鳥たちを一通りカバーできます。
静寂の中、聞こえてくるのは鳥のさえずりだけ。
本当に贅沢な時間を過ごせます。
朝8時から夕方までハイドで過ごす常連さんもいますね。
シマエナガやハシブトガラも来ますよ。


勿論、森の中の散策道はたのしい。
カラ類、ケラ類、トケン類、ミヤマカケス、
ノゴマ、ノビタキ、ベニマシコ、センニュウ類、ハイタカなど。
冬にはベニヒワ、ミヤマホオジロが来ることもあります。


根室では野鳥観光振興アドバイザーという仕事をしていました。
野鳥ガイドのかたわら、市民向けの探鳥会も数百回開催しました。
このプレート、野鳥観察に目覚めてくれた市役所の課長さんが筆を執ってくださいました。


「納沙布岬ハイド」 このハイドは海・海鳥を見るためのハイドです。
日本の最東端(=アジアの最東端)である根室市納沙布岬。
その岬には北海道で一番古い歴史のある納沙布岬灯台が立っています。
その岬の外側(=海側)にハイドを作りました。
目の前は北方領土の歯舞群島。ロシア兵(国境警備隊)の様子も観察できます。
ロシア漁船・巡視艇と日本の海上保安庁の巡視艇の駆け引きも見ることが出来ます。
目の前の海は、オホーツク海と太平洋が出会う場所。
ウミガラス類、ウミスズメ類、ウミバト、エトピリカ、ツノメドリ、チシマウガラス、
アビ類3種、トウゾクカモメ類、カモメ6~8種、
シノリガモ、コオリガモ、クロガモ、ビロードキンクロ2種、ウミアイサ、
時にはオオワシやタンチョウが北方領土から渡って来るのを見ることもできます。
オオワシ・オジロワシは当たり前。時にはシロハヤブサの姿も見かけます。
春にはミズナギドリ、秋にはアビ類が数百万羽の大群で通過します。
窓の下にはハギマシコ
岩場には、渡り途中のキョウジョシギ、ミユビシギ、キアシシギ、
そして近くで越冬する珍鳥チシマシギの姿も撮影可能です。


十分大きな窓。防寒対策は必須ですが。
万力の様に雲台を支える器具=クランプも貸し出してます。


船で沖合から見た納沙布岬。巨大なタワーに上ると北方領土がよく見える。


その台に合わせて「白いハイド」を作りました。灯台の裏が駐車場です。


日本の最東端にある建物は何?
正解は,灯台。ではなく「納沙布岬ハイド」です。
日本=アジアの最東端にあるものが野鳥観察施設って、何だか痛快です。




打って変わって、こちらはロンドン市内にある野鳥公園のハイド
ちょうど東京港野鳥公園のような公園です。
ここでも、探鳥会を100回以上やりました。
ハイドの人気は絶大です。


背景に見えるのはロンドンの町並み。
絵になる。
サンカノゴイやコシギなんかも見られるんですよ。


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